おいかけっこ


「あそぼー、くるれい」
「……」

 どうやら、いつの間にか子供達はクルレイに対する警戒心やら何やらを取っ払っていたらしい。それはそうだ。すでにクルレイは三ヶ月近く教会に滞在していて、しかもこのごろはシスターの手伝いを頻繁にやっている。彼女が用事で留守にするときは子供の世話もした。さすがに大家族で育ったとあって、無愛想だが世話はしなれている様子だ。
 それでもとっつきづらかったためか、あまり子供に遊ぼうと誘われたことはなかったのだが、ついに誘われてしまった。……呼び捨てで。
 タバコをふかそうと箱を取り出しかけていたクルレイはその動きを止めたまま、遊びに誘ってきた子供を見る。完全に見下ろす形になっていて、かなり怖いだろうが。
「あそぼー?」
 子供はそんなそぶりも見せず、首をかしげた。大きな目がキラキラと光っている。
「……」
 クルレイは無言でタバコをポケットへと戻した。
「……何をするんだ?」
「あのねあのね。おいかけっこ」
「二人で?」
「ううん。みんなで。ねー?」
 男の子の声に、こそこそとクルレイ達を遠巻きに見ていた子供達がいっせいに駆け寄ってきて、
「「「ねー!」」」
 と同意した。
 ピスタチオと夜の見回りを続けているおかげで、孤児をたくさん助けることができた。そして全員ではないが、教会に何人か世話になっている。つまり、前より二倍ほど子供の数が増えていた。
「くるれいがおいかけてね! よーしみんなにげろー!!」
 一方的に言って、子供達が逃げていく。取り残されたクルレイはため息をついた。
 一対十六かよ。

 夕方ごろ、お使いに出かけていたピスタチオが戻ってくると、クルレイが教会の入り口の前の段差で腰を下ろしていた。額に手を当てて頭を支え、ぐったりとしている。
「クルレイ、どうかした?」
 心配になったピスタチオが駆け寄る。するとクルレイは顔をうつむけたまま、言った。
「子供達が……」
「みんながどうかした?」
 ピスタチオは辺りを見回す。何か問題でもあったのだろうか? だが子供達は各自元気に遊んでいる。何もあったようには見えない。
 再びピスタチオがクルレイを見ると、クルレイはくてり、とさらに頭を落とした。
「元気すぎる……」
「……たしかに、おとなにはきついかも」
 ようやく事情を飲み込んだピスタチオが苦笑した。