森を一羽の梟が飛んでいく。だがただの梟ではない。その梟はどこか青く光っている。
青く光る梟は、悠々と森の中を飛んでいく──……。
「うわああああああ」
その時、ヒトの悲鳴が、森に響いた。鳥がいっせいに飛び立ち、木々が揺れる。梟はピクリとその声を聞きつけて、その場で静止した。そうして、声のするほうへと、梟は木々の合間を縫って飛ぶ。
その先には腐りかけた狼に襲われている村人がいた。地面に倒され、両手で必死に狼のあごを押さえているものの、表情は恐怖に引きつり、ガクガクと振るえている。
それを見つけた梟は近くの木に降り立ち、両の羽を静かに広げた。すると、梟に応えるように木の枝が伸び、狼の胴体を掴む。そして村人から引き剥がし、そのまま何度か攻撃すると、狼はやがて崩れて動かなくなった。木はそれを地面へと下ろしてまとめ──梟がまた羽を動かすと、地面が隆起し、崩れた狼を飲み込む。そうして、後には何もない地面だけが残った。
その作業を終え、梟が一息ついて──……
「せ、精霊様……?」
唖然とそれを見ていた村人が、思わず呟く。梟がその言葉に村人をみた。村人の青年は、目を丸くして、梟を見、やがて手を合わせて、頭を下げた。
「ありがとうございます、精霊様」
梟は黙ったまま、静かに枝を飛び立った。
◇ ◇ ◇
だんだんと薄暗くなっていく森を通り、その中にぽつんと建っている祠へと向かう。祠にはお供え物が置かれていた。梟は祠の近くの枝に一度降りたって辺りを見回す。だが直ぐにまた羽を広げた。
探しヒト──探し精霊というべきだろうか──は祠にいないことが多い。祠よりも寧ろ泉を好んでいる節があるのだ。
梟は泉へと飛んで──案の定、そこに半透明の、淡く青く光る身体を持ったセレがいた。セレはどちらかというと細い印象を受ける精霊で、どこかつかみどころがない。
「ア、おかえリ。見回りご苦労サマ」
にっこり、と笑みを浮かべてセレは梟を見た。今、梟──フクロウ、はこのセレの支配下にある。眷属、というべきだろうか。村人が言っていた精霊様、というのはセレのことであり、フクロウ自身は精霊様でもなんでもない、ただの使い走りにすぎない。
動きたくない、というセレの代わりに森を見回る──ただの目、だ。先ほどの力もセレに借りたものに過ぎず、そのことについて感謝され、精霊様と敬意を表されることに、フクロウはまだ慣れない。
「また、精霊様と……」
「そう呼びたイみたイだからネ。マァ気にしなくていいヨ」
「……」
フクロウはセレの手にとまって黙り込んだ。セレはそんなフクロウをジッと見ている。
姿が変わり、主人も変わり──再会の約束はしたけれど、まだその目処も立たない。
眷属とは言うけれど、使い魔であったときと変わらない──……いや、そうではない。
それも考えている。だがそれだけではない。
ただ、
あの場所が、恋しいだけだ。
「その内、慣れるヨ」
笑みを浮かべてセレが言った。フクロウには、それに頷くことしか出来ない。
そうして、そうやって。新しい姿で生きていくことしか、出来ないから──……
──そう、思っていたから。
「イツからだっケ? キミがここに来たノ」
「……十日もたっていなかったように思いますが」
「フゥン……。あのネ?」
「はい」
「飽きタ」
「……は?」
終わりは唐突に、訪れる。当人はよく知らないままに。
「タダの使い走り、っていうのも飽きたノ。ダカラ、ナイトになっテ?」
「それは、どういう──」
「精霊の騎士になってきてヨ。強くなって戻っておいデ?」
楽しそうな笑みを浮かべてセレはフクロウに言った。
それは気紛れ。本人にしか分からない、理由の。
あの場所に戻れるのも、そう、遠くない──……。
以下ギャグが混ざったのでちょっと区切って続き、というかギャグの分をSSSぐらいでカキカキ、というか小説じゃないこれwww
見なくても話は完結してますw
フクロウが唖然としているうちに、セレは一度指を鳴らした。何か伸ばされるような感覚がして、視点が変わる。眩暈にふらついて足を踏ん張り、手を額に当てた──ところで、違和感に気がついた。見えるのは、人間の手だ。しかも、なにやら一気に涼しくなって──……。
「……え」
「行ってらっしゃイ」
「いや、主、服……は……?」
「ン? アア、ヒトは服が必要だっケ」
「必要だ。これでは変質者だ……!」
フクロウのツッコミが森に響き渡る。ふと、セレが森の向こうに目をやった。
「ア、ヒト」
「!!!」
フクロウが青ざめ、大あわてで泉に飛び込んで沈む。セレは通り過ぎるヒトを見送って、また口を開いた。口元には楽しそうな笑みが浮かんでいる。
「行ったよ、モウ」
泉から顔だけを出して、フクロウがセレを睨んだ。だがそれでもセレはいっそう可笑しそうに笑うばかりで。
「仕方なイ。知り合いのヒトにキミが社会に馴染めるまでの世話を頼んであげるヨ。興味もたれて調べられるかもしれないけド、悪いヒトじゃなイから安心しテ」
明らかに面白がっているセレを見て、安心など出来るわけがないフクロウなのだった。
結局、その知り合いのヒトには興味を持たれて色々調べられかけた挙句、世話をされるというより、することになったのは──……さらなる苦労の始まりに過ぎないのである。まる。